業務用3Dプリンターと一般家庭向け3Dプリンターの違いを解説

業務用3Dプリンターと一般家庭向けの3Dプリンターの違いについて解説する記事です。3Dプリンターは、元々は業務用で使用されていて、特許が消滅すると共に、一般家庭向けのモデルが台頭しましたが、人気に火がつくことはありませんでした。これにはおそらく業務用と一般家庭向けの3Dプリンターの性能差も影響していると考えられます。多くの人々の期待とはほど遠い性能だったのです。

業務用3Dプリンターと一般の3Dプリンターの違い

3Dプリンター

3Dプリンターは、一昔前までは、我々一般人には縁遠いものでしたが、特許が切れ始めた2010年頃から、急速に一般家庭向けの製品が登場してきました。現在でも一般家庭向けの3Dプリンターは通販や家電量販店などで販売が続いていてかんたんに手に入れることができますが、ブームの頃と比較すると人気は下降しているようです。これは多くの人々の期待とは裏腹に、格安3Dプリンターの性能が劣っていたことも関係しています。発展途上の市場だったとは言え、格安3Dプリンターでプリントアウトする造形物の仕上りやクオリティは、ユーザーを満足させることができなかったのです。一方、業務用3Dプリンターの販売数は増加しています。2013年頃から始まった3Dプリンターのブームが過ぎ去ったあとも、業務用3Dプリンターは着実に進歩を続け、ビジネスの世界では変わらず信頼されています。では、なぜ業務用と一般家庭用で評価が割れてしまったのでしょうか?ここからは業務用と一般家庭向けの3Dプリンターを比較して、その答えを探ってみましょう。

大きさ

オフィスや一般家庭などで使用されている普通のプリンターも大小さまざまですが、3Dプリンターの場合は、明らかに大きさが異なります。オフィスの複合機などの場合、普通のプリンターでも大きいサイズのものも存在しますが、プリンター単体で考えた場合は、持ち運べないほどの大きさのものはほとんどないでしょう。
3Dプリンターの場合、一般家庭用の製品はひじょうにコンパクトです。対照的に業務用の製品は大きく、人の身長を大きく超える大きさの製品もあります。ただ、大きければ業務用というわけではなく、コンパクトで精巧な仕上げが可能な業務用3Dプリンターも存在します。また、3Dプリンターは大きければ大きいほど良いわけではありませんが、大きい物体を成形できることは確かです。

造形方式

造形方式は、造形する物の用途や素材に大きく関係します。言い換えれば、3Dプリンターは造形方式で選ぶ、と言っても過言ではないでしょう。ここで基本となる5つの造形方式についてかんたんに触れておきましょう。

・光造形方式

光造形は、3Dプリンターの技術としてはもっとも古いもので、液体樹脂に紫外線を照射しながら層を作り、この作業を繰り返して積層して立体を造形します。業務用としてはもっともオーソドックスな形式と言えるでしょう。

・インクジェット方式

普通のインクジェットプリンターに似たシステムを使って造形するのが、このインクジェット方式です。材料となるアクリル系の液体樹脂をインクジェットから噴射し、この樹脂に紫外線を当てて造形します。精度が高く、しかも高速に作業を進めることができます。

・粉末焼結方式

粉末焼結方式では、レーザー光線を使って粉末の材料を固結させて立体造形する方法です。粉末化した材料を使うので厳重に取り扱わなければなりませんが、ほかの方式とは異なり、金属を材料につい変えるというメリットがあります。耐久性、複雑な造形への対応も可能ですが、表面のフィニッシュが少しざらつくため、美しくなめらかな造形を求めるのであればあまり向きません。

・粉末固着方式

この方式は、粉末状の材料(主に石膏)に接着剤を噴射して固め、立体を作り上げる方法です。この方式ではフルカラーによる着色が可能なので、繊細な色表現が必要なフィギュアや模型などの製作に向きます。ただ、材料が石膏という性質上、衝撃には弱く、脆いという難点があります。

・熱溶解積層方式

熱溶解積層方式は、3Dプリンターブームを引き起こしたとも言えるものです。2009年にこの方式の特許が切れ、それをきっかけに多くの人々が3Dプリンタービジネスに参入しました。現在でも一般家庭用の3Dプリンターを中心にこの方式を多くの機種が採用しています。熱を使って樹脂を溶かしながら押し出し、この作業を繰り返しながら層を積み重ねて成形します。安全で安価な材料を使うことから費用対効果が高いというメリットがありますが、成形物の仕上りや精度の面では他の方式の劣る部分があります。




このように、3Dプリンターの主な造形方式は5つ。この中から自社の条件に合った方式を選びます。
一般家庭向けの3Dプリンターや、比較的価格の抑えられた製品には、コストパフォーマンスの良い熱溶解積層方式が採用されています。ただ、業務用の3Dプリンターは技術の進歩もめざましく、粉末固着方式やインクジェット方式を採用するビジネスが増えているようです。

価格

やはり業務用と家庭用の3Dプリンターでもっとも目立つ違いと言えば価格です。業務用3Dプリンターの価格帯は、中級クラスの製品で200万円台~になるので、上級クラスの製品だと1000万円台の値札が付けられるものもあります。
一方、一般家庭用の3Dプリンターは、上級クラスでも数十万円程度。一般的な製品で10万円前後、1万円前後で購入可能な製品も存在します。

仕上りの良さ・強度

通常、造形物の仕上り、強度は業務用3Dプリンターが一般家庭用3Dプリンターを凌駕します。もちろん、販売価格や造形方式が異なる以上、単純に比較はできないのですが、一般論で言えば、これで間違いないでしょう。ハイエンドレベルの家庭用3Dプリンターはかなり高い性能を誇りますが、やはり現段階では業務用との差は大きいと言わざるを得ません。

3Dプリンター・業務用と家庭用の特徴を比較

3Dプリンター

ここまで、業務用と家庭用3Dプリンターの違いをご説明してきましたが、少しわかりやすい形で整理してみましょう。現在、業務用3Dプリンターでは光造形方式が主力で、その後を追う形でインクジェット方式や熱溶解積層方式などが利用されています。一方、一般家庭向けの3Dプリンターは熱溶解積層方式。熱溶解積層方式は、層を積み重ねる際に痕が残りやすいというデメリットがあります。以下の比較は、これまでのまとめです。

【3Dプリンターの特徴】
業務用 家庭用
造形方式の特徴 熱溶解積層方式、光造形方式、インクジェット方式、粉末焼結方式、粉末固着方式 熱溶解積層方式
使用する材料 光硬化樹脂、セラミック、金属材料など 光硬化樹脂、PLAやABS樹脂など
価格帯 50万~1000万円程度 1万から30万円程度
積層ピッチ 0.01mm 0.1mm

こうして見ると、価格帯や積層ピッチに関して、両者の間に大きな差があることがわかります。また、使用できる材料に関しても、業務用3Dプリンターの中には金属系の材料が使えるものがあることも大きいでしょう。
もちろん、一般家庭用の3Dプリンターは、機能を意図的に落としていることは意識すべきでしょう。コスパの高い造形方式を使うだけでなく、一般的には必要とされない精度や性能を省略することで、多くの人に3Dプリンターによるもの作りを楽しみ、そして学んでもらうことは、メーカーにとって、将来の顧客作りにつながります。
業務用と家庭用では文字通り、3Dプリンターの用途は違います。現状、ビジネスとして造形物に精度、そして強度を求めるのであれば、業務用モデルの中から選びましょう。